2007年08月16日

決着の余波

 住友生命裁判が和解で決着した事を受け、CM音楽制作の現場では、作曲家との契約が非常にきっちりと行われるようになったと、最近かつて取引のあったプロダクションの社長から聞いた。

 自分の起こした行動が、変革の礎となったのは喜ばしいが、再使用や、使用延長など再契約時に発生する、作家への報酬は、殆どの場合、代理店が立て替える形で支払われているというのはちと頂けない。
 作家にしてみれば、どこが払おうがあまり問題ではないのかも知れないが、私は本来、その楽曲を使用するクライアント企業が、その費用を負担するべきではないかと思うがどうか。
 そう思えばこそ、私も代理店相手ではなく、直接広告主と争ったのである(勿論それだけが理由ではないけれど)。
 しかし、あの裁判があったことにより、いままでは場当たり的に、適当に処理されていたこの問題に、ルールのようなものが出来、個別にきちんと処理されるようになったのは、将来に向けて、良い兆しと言えるのかも知れない。これが東京だけでなく、全国に浸透してくれればよいのだけれど。

 その一方で、あまりに日本的というか、いかにも村社会的な問題も発生している。あの裁判で私の側に立ってくれたプロダクションなどが、その後仕事を取り難くなっているというのだ。

 私自身が、あの裁判を起こせば、この業界で仕事が出来なくなるだろうと言うのは、覚悟の上であり、事実そうなったことに対しての恨み言を言うつもりもない。が、第三者までとばっちりを受けるとなると話が違う。あまりの未開野蛮なその風習に、ただ呆れるのみで言葉が出ない。
 
 証拠となる数々の資料を提供してくれた作曲家諸氏に、とばっちりが及んでいないことを、ひたすら祈るのみである。極力個人名は出ないよう、努力したつもりではあるが、中には堂々と名前を出して協力して下さった方もいるので、その辺が気になるところだ。

2007年01月04日

ページビュー

 明けましておめでとうございます。私は昨日、久高島へ行って、沐浴も兼ねて初泳ぎして参りました。温かかったのと、ちょうどその時間に晴れたおかげで、寒くもなく、非常に気持ちの良い海水浴となりました。
 さて、本題ですが、「朝日新聞で不採用になった原稿」のページビューが今日現在で6,998ありました。津田大介さんのブログで取り上げて貰ったことが大きな要因だと思います。
より多くの人に読んで頂きたいので、読まれた皆様も、ご自身のブログ等でご紹介頂けると、非常に嬉しく存じます。
 どうぞよろしくお願い致します。

2006年12月30日

朝日新聞で不採用になった原稿。

 住友生命保険相互会社との和解を受けて、朝日新聞の「私の視点」に原稿を送ったのですが「テーマが個別具体的過ぎて普遍性がない」との理由で不採用になってしまいました。音楽やそれに関するものを特別視するこの国の社会の傾向が顕れていると思います。
 編集者の許可を貰いましたので、ここにその没原稿を全文掲載致します。

■守られるべき著作権とは

 以前テレビCMで流れていた、「すみともせいめい」のメロディーを覚えておいでだろうか。この音楽の権利の所在などを巡って作者である私は住友生命保険と交渉を続けてきたが、このほど東京地裁で和解が成立した。
 短く親しみやすい旋律で企業や商品名などを宣伝する音楽を「サウンドロゴ」という。「住友生命」のサウンドロゴは2秒半と短いが、記憶に残っておられる方も多いと思う。私は同社がCMで長年使ってきたことなどに対する正当な対価を求めていたが、今回同社が作者の立場に敬意を払って円満解決に同意してくれたことには心から感謝したい。というのは、これまで広告業界では音楽家の存在が、あまりにもないがしろにされ続けてきたからだ。
 サウンドロゴの制作が容易ではないこと、短い中にどれだけの創意工夫がこめられているかを裁判官に理解してもらうために「住友生命」の社名を、自作である「三井のリハウス」のメロディーで歌って、短い旋律がどれだけ重要かを訴えたり、音符一つ変えて歌って、どれだけ印象が変わるかを実感して貰うなど、色々と作戦を考えねばならなかった。
 一般社会でも、サウンドロゴが音楽作品である、との理解が行き届いているとは残念ながら言い難い。世の中には同じような問題で泣き寝入りせざるを得ない、またはそれを強いられているクリエーター(特に若い人)が、山のように存在している。中小のCM音楽制作会社などで、きちんと契約を交わさないまま作品を作らせては、期限も定めずに使い続けている例は枚挙に暇がない。最近話をした沖縄の制作会社の関係者は「無法地帯」という言葉さえ使っていた。
 相対的に立場の弱いクリエーターが「干されるリスク」を恐れて泣き寝入りをするのは、何も音楽業界に限った話ではない。これは日本の社会構造に強く根ざしているものだと思う。権利を侵害されるのは常に個人や小さな会社だが、大手企業は自分たちの権利を守ることには実に熱心だ。その最たるものの一つが、昨今話題の著作権保護期間の延長問題である。
 日本文芸家協会などの著作権管理団体は、保護期間を現行の著作者の死後50年から70年に延長することを主張する。だが、この法案によって守られるのは誰の権利だろうか。たとえば出版物の場合、著作権料の大部分はその出版元へ行くのだ。音楽や映画などにしても、より多くの金が落ちるのは流通・配給などの段階で、作者へのわずかな還元は後回しにされる。
 私はもとから国に頼って音楽を作ろうなどとは考えていない。個人的には、死んだ後には自作を誰でも演奏できるようパブリックドメイン(社会の共有財産)にしてほしいと思う。だがこの国が今後知財立国を目指し、国民の中から優秀なクリエーターが輩出することに期待するのであれば、何より先に保護されるべきは、既に評価の定まった一部の作品でなく、今まさに新たな創作に挑んでいる若い才能であろう。そして若い世代が先行する作品から存分に学んで応用できるよう、創作への柔軟な利用を認める知財政策を取ってほしいと願ってやまない。

生方則孝:作曲家、シンセサイザー&テルミン奏者。
blog URL:http://ubulog.sblo.jp/

2006年12月17日

和解合意内容

 まずはじめに、泥試合を避け、和解に歩み寄ってくれた住友生命保険相互会社に対し、この場で感謝の意を表明します。長期戦にもつれ込み、判決→控訴→上級審という流れになったとしたら、体力的に耐えられなかったかも知れません。

 今回のサウンドロゴ問題での和解にあたり、公開出来る部分は以下の通りです。

 紛争の早期解決の観点から、当事者双方が敬意を表明し合って(原告は広告媒体に使用される「すみともせいめい」と言う企業名に敬意を表明し、被告は原告による「すみともせいめい」サウンドロゴの制作に関する精神的営為に対し敬意を表明)円満解決しました。

 以下は私見ですが、精神的営為によるサウンドロゴ制作とはまさに作曲を意味しているのであり、この事実をもって、サウンドロゴの著作物制は認定されたと解釈します。今後同様の紛争が発生した場合は、これを前例として、無断あるいは不正使用した側からされた側に対し、幾ばくかの金銭の授受が発生することは確実だからです。
 また、今回和解交渉がが決裂し、判決となった場合はサウンドロゴの著作物性が認定されたであろうと確信しています。

「紛争の早期解決の観点」も、重要です。今後この手の問題は、早めに解決すべし、と言う方向性を示唆することになるからです。

2006年12月15日

和解成立。

 本日、住友生命相互会社との間で、サウンドロゴ不正使用問題の、和解が成立しました。

 詳細については、公表を許されている部分と禁じられている部分とがあるので、和解文書が手元に届き次第、公開出来る部分に関しては、私の所見と共に、ここで公開します。

 交渉開始から2年以上、提訴から丸1年でようやく終結しました。この和解が、同様の問題を抱える多くの作曲家にとって、一筋の光明とならんことを祈ります。同時に、著作権に対する認識向上に少しでも役に立たんことを。

2006年07月31日

本日第3回弁論準備でした

 本日、第3回弁論準備でした。次回は私自身が裁判官に提訴に至るまでの事情や心情などを直接説明すべく、東京地裁へ出向きます。時期は8月下旬を指定されましたが、私自身の都合がつかないため、9月の中旬以降になると思います。

 また、弁論準備の内容を今までこのブログで公表して来ましたが、本来非公開であるものを発表してしまうのはどうか、という判断もあり、少なくとも審理が公開になるまでは、ここで内容を発表することを差し控えたいと思います。

 現段階では、あくまで弁論準備ですので、どちらが有利・不利ということもなく、相変わらずおあずけ状態ですが、次回直接裁判官に説明することで、それ以降なにか進展があるような気がします。

 と言う訳でしばらくの間、裁判の進行についてはこの場で報告出来なくなりますが、悪しからずご了承下さいませ。

2006年07月06日

嬉しいことに

 オリジナル版と、現行ヴァージョンの採譜をして下さった小六禮次郎さんが、メロディだけでなく、ハーモニーの重ね方も私が編曲したオリジナル版の方が優れていて、現行ヴァージョンはそれに比べ、稚拙であるという意見を付け加えたがっていた、と言う話を弁護士から聞いた。

 音楽家として、素直に喜びを感じた瞬間。

2006年07月05日

裁判所が著作権判断を避けた場合

 以前、この問題に関して、サウンドロゴが著作権法上の著作物に該当するかどうかの判断を避ける可能性があると書いた。しかし、JAMなどの業界団体の解釈では「サウンドロゴは、その性質上、一定の制限が発生するが著作物である」との見解が既に定着している。だからこそ、損害賠償を求めると同時に「確認訴訟」も起こしているのだ。
 しかし裁判所は近年、この手の法律判断を避ける傾向があるらしく(合法か違法かは判断するが、法律そのものの内容に踏み込まない)、その行く末は今だ霧の中だ。
 仮に裁判所(地裁)が、著作物性の判断を避けた場合、私はどうすればよいか。この場合問題になるのが、まずは賠償金だろう。裁判所が賠償金額を幾らと判断するか、である。これがあまりに低い場合、今後この手の問題に対する、抑止力とならないかもしれない。つまり「万が一訴えられてもこの程度で済む」という認識を持たれてしまう恐れがあるのだ。
 作曲家が楽曲の不当使用によって、財産権を奪われ、泣き寝入りを強いられる、という問題の発生を防ぐためには、問題の原因となる企業が「こんな痛手を受けるくらいなら、きちんと契約しよう」と言う意識を持ってくれないといけない訳で、それにはそれ相応の金額が必要になる。
 正直言って、今回の賠償請求額が満額認められたとしても、社員一人の平均年俸には達しないであろう程度の金額なので、これが企業にとって、痛手かどうか、はなはだ疑問に思える今日この頃だ。もちろん原告にとっても、裁判にかかる費用と時間、裁判を起こしたことで既に発生している様々なデメリットを考えれば、満額出たところで喜ぶ程のものではないし、サウンドロゴは著作物である、と言う判断がなされず、賠償金も大幅に減額された場合は、ダメージだけが残る上、同様な問題の抑止力にもならなければ、一体この裁判で何が残るのか、また、その後どのようなアクションを起こせばよいのか。

 提訴から半年以上が経過した現在でも、今だ「ソレミー」と「ソーミー」の違いなどという初歩的な内容に拘泥し、本格的な口頭弁論さえ始まっていない状況の中で、不安と焦燥感だけが募っていく。

 無理とは知りつつも裁判の迅速化を切に願うものである。

2006年07月03日

ドドドドソレミーとドドドドソーミー

 原作者にとっては当然なのだが、住友生命サウンドロゴのメロディは元々ホ長調で「ドドドドソレミー」である。これをリメイクの際に、制作側の人間がきちんと聴き取れず「ドドドドソーミー」に変わってしまったのである。「ソレミー」と「ソーミー」なんて、対して変わらんじゃないかと思う人もいるだろうが、歌ってみればわかるだろう。この二つは相当に違う印象を与えるのだ。
 故に私はメロディの改竄(改変)と主張しているのだが、被告も被告側弁護士も、この二つに違いはないと反論し、裁判官も聴き取れないというので、私と面識のない著名音楽家に、この二つが違うと言うことを証明して貰わざるを得ない運びとなった。何故面識がない作曲家でなければならないかといえば、知己であった場合、私に有利な証言をしたと勘繰られてしまうからである。
 こちらから見れば、火を見るより明らかな事実を、わざわざ謝礼を払ってまで、第三者に証明して貰わねばならない、というのは、一種屈辱的なことではあるが、裁判を有利に展開するには必要なこととなれば仕方のないことである。
 担当弁護士と協議の末、NHKの連ドラや大河ドラマ、映画音楽などを数を多く作曲されている、小六禮次郎氏に採譜を依頼した。
 その結果は残念ながら、現時点では公表出来ないが(公表する必要も無いくらい、明らかなんだけれど(^_^;)、結果を受けてどのような展開に至ったかは、今月31日の第4回弁論準備以降、8月に入ってからこの場で報告させて頂く。

2006年06月17日

争点がだんだん明らかに

6.18 0:50 加筆&修正

 昨日、二回目の「弁論準備」が行われた。

 争点がかなり明確になってきたが、今だオリジナルの「ドドドドソレミー」と改竄された「ドドドドソーミー」の違いを、被告が認識出来ず、裁判官も聴き取れない、ということで、高名な作曲家に報酬を支払って、採譜して貰わねばならない、という運びとなった。この二つの違いが判らないという事実も、驚愕ものだし、何故一聴瞭然のものに、わざわざ金銭を払わなければならない、という釈然としない感覚もあるのだが、被告側が出してきた写譜屋による採譜も聴き取れていなかったので、和声の中で動いているメロディを聴き分けるのは、ある程度訓練された音感の持ち主でないと、無理なのかも知れないと、ここは割り切らざるを得ない。
 私と懇意にしている有名作曲家に頼む、という提案も弁護士にしたのだが、それでは証拠として弱くなってしまう、ということで、全く交流のない著名作曲家に依頼することになる。結果「ドドドドソーミー」となったら、笑うしかないが。(笑えないけれど)
 
 それはさておき、争点だが、新聞の見出しをパクられた、という訴訟がかつてあり、その際「新聞の見出しは著作物には当たらないが、無断で使用したのは不当」として、損害賠償を命じた判例がある故(実はこれ、被告が出してきたサウンドロゴの著作物性を否定する傍証にあった)、サウンドロゴが著作物であるなしにかかわらず、買い取りという合意があったか無かったかか(勿論無いし、あったというのならば、被告はそれを証明しなくてはならない)、もし買い取りでないならば、無断使用は不当である、という方向に流れる気配が漂ってきた。同様の案件で「三井のリハウス」は司法に委ねることなく、当事者同士で再契約が成立している為、その路線に合わせるような判断がされそうな雰囲気が濃厚だ(不確実ではあるが)。
 裁判がその方向に流れた場合は、サウンドロゴの著作物性に関する判断は見送られる可能性は高い。もしそうれば甚だ不本意ではあるが、万が一著作物性を否定する判決が出ては藪蛇なので、それに対しどう対応するかは慎重に考えねばならない。

 万が一、裁判所がサウンドロゴの著作物性判断を避けたとしても、それが著作物であろうが無かろうが、無断再使用や改竄は不当、という判断がでれば、事実上、サウンドロゴは著作物と同等の扱いを受ける訳で、これが前例となり、同様の問題で、泣き寝入りを強いられている作曲家にとっては、有利な前例となり、大きな目的は達せられると考えて良いだろう。
 
 しかし本格的な裁判はまだ始まっていないので、結果どうなるか、この時点では安心する訳にはいかないのだけれど。

 契約書は初めから存在しないので、当時の音プロ関係者の証言が非常に重要なものとなる。が、私がオンエア開始から5年経ってその音プロにクレームを出したのは事実であるし、口頭でもバイアウトに応じたという事実はない。

 次回弁論準備(まだ口頭弁論まで行かない、というか行けない。流石にキツイ)は7月31日と決定した。

2006年06月16日

口頭弁論ではなかった。

 4月に第二回の口頭弁論があって、今日、第三回、と思っていたのですが、実はこれ、私の勘違いで、「弁論準備手続」というものだそうです。
 つまり、何を争点にするかを明確にするために、裁判官、原告、被告がやり取りをしている、という段階で、簡単に言えば、スタートラインに立つためのウォーミングアップのようなものです。

 口頭弁論が開かれたのは一度だけで、これは名乗りあいに過ぎません。

 つまり、裁判はまだ、始まっていないも同然の状態でした。。。。。。

 これは、根気が要ります。ただし、この弁論準備段階で、被告に全く勝ち目がないと裁判官が判断すれば、もしくは被告自身が争っても勝ち目はないと考えれば、口頭弁論まで行かずに、和解が成立することもあり得るとのことで、私はそれに期待します。
 
 サウンドロゴは著作物という明文化された判決が下りなくとも、事実上著作物であると決定するに等しいですし、費用的、精神的、時間的にも長期間争うより遙かに負担が少なくてすむからです。

2006年05月28日

住友生命問題に関する記事のアーカイヴ

Yahoo!BLOGSに載せていた住友生命関連の記事アーカイブです。

【被告準備書面】

作成日付 2006/5/24(水) 午後 4:13

 住友生命より、被告準備書類が送付されてきました。所謂被告の反論内容が書かれたものとそれを裏付ける証拠物件です。証拠物件、こちらが提出した物量に比べて、かなり少ない。

 反論内容は第1と第2に分かれていて、第1は「サウンドロゴの著作物性」を否定する理由が幾つか書かれています。

 以下は抜粋と要約です。(引用符付きの部分は抜粋、それ以外は要約)
曰く、

サウンドロゴは楽曲である必要はなく、犬の声や牛の声であってもよく、その音によって企業・商品・サービスが消費者にアピールされればよいのである。

曰く、

歌詞ならびにアナウンス抜きでこれを聞いたとしても、視聴者はそもそもこれを「楽曲」と認識しないだろうし、平均的な視聴者がこれをCMのサウンドロゴと認識することは通常あり得ない。

曰く(これがもの凄いんだけど)、
サウンドロゴは、様々な制約を受けて制作されるものなので、あのようなメロディになったことは、音の制作者にとって自然なことであり、メロディの選択幅は極めて小さなものであった。他社のサウンドロゴも同じような諸制約の下で作られたと考えられ、音として類似した特性を持っている。

曰く(これは既にあちこちで言われていることだけれど)、
サウンドロゴのような短いものに著作権を与えてしまうと、他の作曲家の創作活動を制約することになる。←この見解については
http://blogs.yahoo.co.jp/ubie55/22580622.htmlで反論しています。

かなり仰天ものの内容ですが、第2はもっと凄いんです。

私はかつて、iBlogで、この件について記事を書きました。
(現在はデッドリンク)http://homepage.mac.com/ubuman/iblog/C1487134416/E726883282/index.html

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 今年になって、この二つのサウンドロゴがリニューアルされた。
 しかし、著作権者である私にはなんの事前連絡もない。
 テレビを見ていてびっくりした私は早速行動を起こし、こんな事がまかり通って良いのか、と関係各所に意見を求めた。
 サウンドロゴ、買い取り(バイアウト)が前提とは言え、アレンジ変更や再録音は明らかに二次使用である。
 業界の慣例としては、通常、それがどんなに古い物でもオリジナルの作曲者とコンタクトを取り、了解を得るのだそうだ。無償でよいとなればもちろん無償だが、対価を要求されればそこで交渉が始まるのだ。当たり前だが。
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 これを持って、被告は、私が「本件サウンドロゴの著作権はバイアウトで被告に買い取らせたが、著作者人格権は自分に残っているので二次使用や改変については補償を受けたい」と主張していると決めつけ、原告は当初からこのロゴについて、自分の権利を全て譲渡し、財産的な請求権は一切無いことを知っていたにもかかわらずこのような訴訟を提起した、と断じています。著作者人格権というのは、譲渡・販売したくても出来ない権利だと言うことをご存じないらしい。

 しかも「買い取りが前提」というのは、私の主張ではなく、私の質問に対して返ってきた答えを書いた物です。ちゃんと「〜だそうだ」って書いているじゃありませんか。ちょっ段落の取り方が稚拙で、誤読される可能性がある文章だったとは思いますが、たとえ買い取りの作品であってもリアレンジや再録音は、作者の了解が必要というのが業界の慣例という答えを得た、という趣旨は、伝わると思うんですけど、どうなんでしょう。
 もしかしてわざと誤読しています?

 その他にも、制作時期について、私は住生自身の調査結果を持って、いついつ制作と言っているのに、嘘を教えておいて、事実と違う、原告の主張の信頼性には問題がある、などとメチャクチャなことを主張しております。

 しかし著作物ではないと言っておきながら、著作権は譲渡されているという主張、もの凄く矛盾していませんか?
 
 メロディの改竄についてですが、写譜屋さんに聴き取りをさせています。写譜屋さんは、作曲家やアレンジャーが書いたスコアを清書したり。パート譜化したりすることのプロで、耳コピのプロじゃありません。しかもこれ、現行バージョンを聴き取った譜面じゃない?


【被告から準備書面が届きました】

作成日付 2006/5/23(火) 午後 4:08

 本日、被告から準備書面が届きました。明日も第二便が届くようです。
 全部にきちんと目を通してから反論ポイントを書き出さねばなりません。要点は後日アップしますが、要するに、サウンドロゴの著作物性を否定する内容です。また、私がブログで「サウンドロゴは買い取り」と表明していると書かれているのですが、私、そんなこと書いた憶えないんですけどね、と昔のブログ(iBlog)を調べたら、出てきましたよ。私が、関係各所に尋ね回って、業界の慣例ではこうこうだ、と書いたのを私の本件に対するスタンスだと、曲解しているんです。

 精神的に疲れますね。

【本日、第二回口頭弁論でした】

作成日付 2006/4/10(月) 午後 8:35

 今回は、第一回目で被告が提出した訴状への反論に対し、裁判長が質問し、被告がそれに答える、と言うのが法廷の主な内容でしたが、被告が大部分の質問に答えることが出来ず、裁判長から一ヶ月の期間と共に宿題が与えられたそうで、その為、次回口頭弁論は、またもや二ヶ月先の6月16日となりました。これはもう、本当に長期戦です。

 新たに解ったことですが、メロディが「ドドドドソーミー」になってしまった新ヴァージョンは、私が何度か仕事をしたことのあるプロダクションが、制作を担当したらしいのです。もしオリジナルの作曲者が私と知りつつ引き受けたのなら、実に悲しいことです。
 で、その際、そこのスタッフがオリジナルを聴き取って採譜したようなのですが、「ソレミー」を「ソーミー」と聞き間違えたようなのです。プロの仕事としてはあり得ないミスです。
 間もなくオリジナルヴァージョンの音源を入手しますが、私の担当弁護士は「自分が聞いてもソレミー」だと解るそうです。
 しかし裁判長も被告側弁護人もこの違いが聴き取れない、と言うことで、第三者的なプロの音楽家に依頼して、もう一度オリジナル版の採譜をするようにと命令が出されました。
 何でこんなことするかというと、この作品が紛れもなく私が作曲して納品したものであることを確認するためだそうです。これは、この部分について被告が私を本件ロゴの作曲者かどうか、確認できないと申し立てているからです。

 また被告は。訴状にある、本件ロゴの使用開始時期と使用期間が、実際とずれていると主張しています。ずれていたところであんまり意味はないのですが、この使用時期と期間というのは、最初に交渉に当たった行政書士の質問に対する、被告側の返答に基づいているので、自分で言ったことをソレは間違いだと主張している事になります。なんだか良くわかりません。

 また、被告は「買い取り」であるとも主張していますが、これは被告が自分でそれを証明せねばならず、これは不可能です。また仮に代理店との間で「ロゴは買い取り」という契約があったとしても(勿論そんな契約はない)、代理店に作曲家の権利を代理する権利はこの場合ありませんから、この主張は通らないでしょう。

 そして肝心要の「著作物に非ず」と言う主張ですが、裁判長から「短さ故か?」と根拠を問われたのに対し「主体である企業名に、従属物であるメロディを付加したものだから著作物ではない」と述べたそうです。長さを問題にしなかったのは意外でしたが、この論法で行くと、世に存在する楽曲の何割かが、メロディが従属物であるが故、著作物に当たらない事になってしまいます。

 そんなわけで、この裁判、まだまだ時間がかかりそうな気配です。

【住友生命の答弁書】

作成日付 2006/2/23(木) 午後 2:09

 被告からの答弁書が届きました。

 原告の請求をいずれも棄却し、訴訟費用は原告の負担とする判決を求める、だそうです。しかし請求の原因に対しては、事実関係を調査中で、追って認否及び反論をするそうで、よくわかんないけど取りあえず否定、と言う感じです。

 しかも、サウンドロゴのメロディや編曲に関して、ものすごくトンチンカンな質問が添付されていました。
 私は、証拠として、現在オンエアされているものと、私がもともと作ったものを再現したものをCD-Rに焼いて提出したのですが(これをロゴA,Bとする)、このA,Bはいずれも原告が作曲したのか?だそうです。
 また、一緒に提出した譜面と録音されたサウンドロゴにはどのような関係があるのか、と言う質問もありました。

 以前Logic proというアップルの音楽用アプリケーションが、起動しないという現象について、アップルのコールセンターに電話した時の応対を思い出します。

アップル「音楽のことはよくわかりません」
   私「音楽のことなんか質問していません。御社のアプリケーションが御社のパソコンとOS上で起動しないことについて訊いているのです」

【第一回口頭弁論の結果】

作成日付 2006/2/20(月) 午後 4:48

第一回口頭弁論の結果が判明しました。

1,被告が本案について答弁したので、管轄は東京地裁に確定。

2,3月13日までに、原告として準備書面を提出しなければなりません。

   内容は、
   A 侵害されている支分権の特定(複製権、公衆送信権)
  
   B 証拠として提出している音源のA、B両タイプの説明(ドドドドソーミーの現行ヴァージョンと、ドドドドソレミーのオリジナルヴァージョンのメロディとハーモニーの違いを、裁判官、被告側の弁護人共に聴き取れないらしいで、説明しなければならないのです)

   C 慰謝料請求の理由を「同一性保持権」の侵害のみに集約

3, 次回は弁論準備期日で、4月10日15時(二ヶ月近くも先・・・・)

4, 現段階での和解は困難で、証人尋問が必要(新聞報道されたことで、被告は態度を更に硬化させたらしい)。

5、 しかしながら原告は、和解による円満解決を希望していることを被告側弁護人に伝えた。

 以上です。答弁書の内容は手元に届き次第お伝えします。

【第一回口頭弁論の日が決まりました。】

作成日付 2006/1/20(金) 午後 1:49

 来月の20日、東京地裁第622号法廷で、午前10時30分より、第一回口頭弁論が行われます。
とは言うものの、私は出廷せず、多分双方の弁護士による訴状の確認と、本社が大阪にある住友生命が、このまま東京での裁判を希望するか、それとも大阪への移送を要求するか、が焦点となり、それ以上の展開はないものと思われます。

 しかし、それまでの一ヶ月は、事態は全く進展しないと言うことがこの段階で決まってしまったわけで、やはり裁判というものを乗り切るには、とてつもない忍耐が必要と言うことが、身に染みました。

【サウンドロゴの著作権について補足】

作成日付 2006/1/14(土) 午前 2:58 (14日 13:34 加筆、修正)

 私、11日の記事に、

>「サウンドロゴは著作物として扱われるべきだが、その権利が及ぶ範囲や行使に関しては一定の制限を受ける物」

 と書きましたが、語弊があるといけないので、ちょっと説明致します。
 実際にどのような制限があるかというと、主に次の2点だろうと思います。あくまで私見ですが。

1,いわゆる放送印税の徴収が出来ない。

 これは、CMの本編BGMも同じなのですが、年単位や永久使用許諾で報酬を受け取るので、1オンエアにつき幾らという方法で報酬を得る事が出来ません。 JASRACにサウンドロゴを楽曲登録しても、放送使用に関する限り、JASRACは著作権料の徴収をしません。これは集計が膨大な作業になってしまい、現実的ではないからでしょう。もし印税の形で報酬がもらえるなら、勿論嬉しいんですけど。

2,CM本編BGMと違って、作曲者名のクレジットを要求出来ない。

 さすがに、商品タイトルや企業名と並べて表示しろ、とは言えません。
 
 基本的には「著作者人格権を行使しない」という条件での契約を求められるので、上記以外にも、例えばその企業が事件を起こしたからと言って「私の曲を広告に使うな」とは言えないだろうとか、幾つかあると思います。

 以上は主として放送使用に際して発生する制限で、サウンドロゴがCD等に収録された場合は、印税、クレジット共に通常の楽曲と同じ扱いになります。

 朝日新聞の記事に載った弁護士の見解を始めとして、サウンドロゴのメロディに著作権を認めてしまうと、他の作曲家の創作活動が制限を受けるので、著作物とするには慎重であるべき、という意見を、あちこちで見かけますが、これ、ちょっとピントがずれていると思います。

 サウンドロゴのために作った、ほんのワンフレーズのメロディが、長いメロディの一部とたまたま一致してしまう事なんて、幾らでも起こりうるわけで、いやもう既に星の数ほど事例はあるに違いなく、これを見つけて、先にサウンドロゴ用にそのメロディを作った作曲家が、著作権の侵害だとして訴えを起こす、などという事は、まずあり得ないと思います。勿論過去にもこのような例はなかったと思いますが、これは「サウンドロゴが著作物として法的に保護されていない」という事実とは、なんの関係もありません。多くの作曲家は、法的規定がなくとも、自作品は例え短いサウンドロゴであろうとも、著作物と考えていますから、この手の訴訟が過去に起こっていたとしても、不思議はない筈です。

 楽曲というのは本来、始めから終わりまで通して一つのメロディな訳で、短いフレーズの集合体、ではありません。Aメロ・Bメロ・サビと分けたとしてもやはり一定以上の長さがあるわけで、それを更に細分化したその一部があれと同じだとかこれと同じだとか、論じる事自体がナンセンスです。逆にサウンドロゴの短いメロディに、前後を付け足したとして、それは元のサウンドロゴと同一であるか、と言えば答えはNoです。サウンドロゴはその長さで完結している楽曲なのですから。この辺りは文章で表現するの、ちょっと難しいですね。実際に演奏したものを聴けば、簡単にわかってもらえると思うんですけど。

 ともかく、サウンドロゴという、ある意味において特異なジャンルの音楽と、普通の楽曲を同列に比較するべきものではないと思います。サウンドロゴのジャンルにおける特異性というのは、なんといってもその短さと、言葉のアクセントなど様々な制約の中で創らなければならない、など条件の厳しさにつきると思います。
 また仮に、ロゴの作曲者による訴訟が万が一起こったとしても、日本の著作権法では、偶然の一致は著作権の侵害とは見なされない事になっている筈ですから、故意に盗用した事が明らかな場合を除けば、問題にはされないのではないでしょうか(1.15 01:33修正:偶然メロディが一致したものを、故意による盗用だって証明するのまず無理ですよね)。

 サウンドロゴどころか、もっと長いメロディのパクリでさえ、日常的に横行しているのに、殆ど問題になっていませんよね。サウンドロゴが著作物だと認定されたからと言って、急に極短いメロディの同一性にについてナーバスになるとは、考えられないのであります。

 サウンドロゴ同士であっても、そのメロディが殆ど同じでも、アレンジやサウンドまで一致しない限り、やはり問題になるとは考えにくいです。もし仮に「× ×生命」という会社が、住友生命のそれと全く同じメロディ、アレンジ、サウンドでCIロゴを流し始めたら、黙っていないのは、私より先に住友生命、ではないかと思います。

 音楽の著作権、というとメロディーについてだけ論じられますが、これはどうなんでしょう。私はちょっと違うんじゃないか思います。サウンドロゴにとって重要なのは、そのメロディーだけではありません、編曲や音色など「聴かせ方」に大きなウエイトがあります。本件ロゴで言えば、「ドドドド」の部分をユニゾンで「ソレミー」から和声にし、そして全体にメロディと同じタイミングでナレーションを被せる手法全てを含んでの「作品」である、と私は考えます。

【「住友生命」サウンドロゴ作曲から提訴に至る経緯】

作成日付 2006/1/11(水) 午後 2:11

「住友生命」サウンドロゴ作曲から提訴に至る経緯を年譜にしてみました。

1986年・・・CM音楽制作プロダクションからの依頼を受け、「住友生命」CIサウンドロゴ(以後、本件ロゴと記す)を作曲。記憶によれば、複数の作曲家によるコンペの結果、私の作品が採用された。「スミトモ」の部分がユニゾン、「セイメイ」が和声というアレンジや、メロディにナレーションをかぶせるアイデアも、始めから曲の一部として構成されている。

(「何故その時にきちんと契約しなかったのか」という声があるが、)当時の業界のあり方として、依頼側、受注側共に、「契約」という概念や「著作権管理」という概念は存在しなかった。これにはCMに限らず、音楽制作全ての現場で、著作権意識が現在に比べれば遙かに低かった、という時代背景がある。
本件ロゴに関しては、「CIロゴなので普通の物より長く使う」という事で、当時私がそのプロダクションから受け取っていたCM音楽作曲報酬の約2倍に当たる、15万円(税別)で受注。「何年くらい使うのか」という私からの質問に、「二年以上、三年から五年くらいではないか」という返答がプロダクション側よりあった事を記憶している。

1987年・・・・本件ロゴオンエア開始

1992年頃・・・作曲から5年が経過した為、プロダクションに対し「作曲時の想定期間をオーバーしている」とクレーム。このころ、CMのBGM に関しては、一年ごとに契約更新を行うという基本ルールが出来、適用され始めたが、サウンドロゴに関しては、明確な規定がなかったと記憶している。

1995年・・・・本件ロゴのオンエアが終了する。それまでにも1,2度、プロダクションにクレームを出すが、事態は進展しないままのオンエア終了となった。

2004年・・・・本件ロゴオンエア再開。再開に関して、住友生命から事前連絡はなかった。制作当時とは別のプロダクションに電話し、過去の作品を掘り起こして使う場合は、原作者に許可を求め、必要に応じて再契約するるのが現在は慣習化している事を確認。その後多くの作曲家や作曲家事務所が契約の曖昧だった時代の作品について、JASRACへの楽曲登録や、クライアントとの再契約を結ぶ作業を行っている事実を確認。

(1.12.23.20追記:TVオンエアと共に、web上でもこのCMが配信されている。webでの使用は、制作当時には想定されていない。無断でweb配信する事は「公衆送信権」の侵害にあたる)

因みにJASRACは登録、委託された楽曲の著作権料徴収の代行をする団体であり、著作権そのものの有無を判断する権限は持っていないし、 JASRACに登録しなければ著作権が発生しないという事はない。日本の著作権法では、作品を作った時点で著作権が発生し、登録の必要はない。
また、文化庁は、短いサウンドロゴも「著作権がある」という見解。

行政書士を通じて、事実関係を調査。当時のプロダクションは社名変更し、CM音楽制作を行っておらず、当時の広告代理店は、担当者死亡のため、資料が残っておらず、現在オンエアされているサウンドロゴは別の代理店が担当している事が判明したので、当該代理店に連絡を取った所「クライアント企業が本件ロゴを使えと指示してきたので、それに従った」という回答を得たので、住友生命と再契約交渉を始める事に。
因みに私のオリジナルはス・ミ・ト・モ・セイ・メイ」に対し「ド・ド・ド・ド・ソレ・ミー」とメロディを当てていたものが、再録音版では「ド・ド・ド・ド・ソー・ミー」になっていた。これはリメークを担当した編曲家が、オリジナルの音程を聴き取り漏らしたか、故意に改竄した物と推察される。

交渉開始当初「誠意を持って対応する」というものだった住友生命の姿勢がある日を境に変化。「使用に問題はない」という主張に変わる。これに対し行政書士を通じて内容証明郵便による、不法使用の通告を行うが、法的根拠を示さないまま「問題なし」の回答と共に、交渉の打ち切りを通告される。

2005年春・・・・本件を弁護士に相談。刑事告発も踏まえての対応を検討し、内容証明郵便による通告書を改めて送付。著作権法の何条に違反していると具体的に不法行為を指摘。これに対し、住友生命は「著作物とは考えていないので、使用に関しての問題はない」という回答と共に、今後の交渉には応じないと通告してきた。黙認(泣き寝入り)か提訴かの二者択一を迫られる。
また「無断使用の犯意」が立証出来ないため、刑事告発は見送る事になった。

同年12月・・・・・東京地裁に住友生命相互会社を提訴。「サウンドロゴは著作物である」という事実の確認(これは前出の文化庁の見解もあり、疑いようのない事実と考える)。無断再使用による著作者財産権の侵害(経済的損害)。メロディの改竄(改変)による著作者人格権侵害(精神的損害)。以上3点が争点。

 以上です。最後にサウンドロゴの著作物性についてですが、私自身「サウンドロゴは著作物として扱われるべきだが、その権利が及ぶ範囲や行使に関しては一定の制限を受ける物」と考えておりますし、通常の楽曲と同じように扱われるべきとは考えておりません。
 実際にCM音楽の業界では「権利に制限付きの著作物」として扱われており、私も含めた作曲家で、その事に異議を唱える者はおりません。
 今回の訴訟の結果は、私自身は勿論の事、不当な扱いを受けても、声を上げられずにいる、多くの作曲家にとってとても重大な影響を与えます。著作物性が認められないならば、一体何なのかという議論を開始しなくてはなりません。現在の日本ではサウンドロゴは著作物でも、商標でも、意匠でもなく、法的保護を全く受けていないものなのです。

【Yahooとlivedoorの記事でカットされた部分。】

作成日付 2006/1/5(木) 午後 7:19

 Yahooとlivedoorの記事は元記事の後半部分がカットされていた事が判明しました。前半だけでは、提訴の内容が誤解されて伝わる恐れがあるので、ここに掲載します。

一昨年四月、別の音楽家が編曲し直したサウンドロゴが無断で再び使用されているのを知り「新たに契約を結ぶべきだ」として同社と協議したが、昨年六月に「著作物とは考えていない」との返答があり、同十二月に提訴した。
 生方さんは「短い曲でオリジナリティーを出すのは難しく、より独創性を求められる。作曲家はいわば孫請けのような弱い立場にあり、無断使用は多い」と話している。
 住友生命保険調査広報部は「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。


【誤解があるといけないので念のため】

作成日付 2006/1/5(木) 午後 6:08

共闘通信の記事より

>訴状などによると、生方さんは同社の依頼で1986年に「すみともせいめい」という企業名を約2秒半の旋律にのせたサウンドロゴを作曲。契約の書面はなかったが、2、3年使用されると思っていたところ、95年ごろまで使用された。

 これだけ読むと、私が過去の長期使用について争っていると、誤解をされる方がいると思うので念のため補足しておきます。

 私が争おうとしているのは、(A)使用を終了してから10年が経過した2004年から無断で再使用をはじめたという事実、(B)メロディの改変及び、(C)このCIロゴが「著作物でない」と決めつけられた事についてです。

【様々なご意見を読んで。】

作成日付 2006/1/5(木) 午後 1:53

 本人の予想を上回る反響を頂き、少々うろたえています。まさかサウンドロゴの著作権問題に、ここまで関心を持つ人がいるとは「想定の範囲外」でした。

 お寄せ頂いた意見に対し、この場でお答え致しますのでご一読下さいませ。

 契約についてですが、勿論譲渡契約はしておりません。音楽制作プロダクションからは、「普通なら一年だけど、これはコーポレーション・アイデンティティ・ロゴなので数年間使う」とだけ言われました。
 ここが重要なのですが、使用開始から5年目を過ぎた頃、プロダクションに対し「幾らなんでも使用が長すぎる、使用の延長料を払ってもらえないか」と数回申し入れた事があります。
 しかしこれは認められず、それから数年の内に使用が停止されたので、沙汰闇となってしまいました。
 今回の提訴には過去の使用に対する請求は含まれていません。既に請求可能な期限をとっくに過ぎているからです。
 その後10年のブランクを経た後再使用を開始したという事は、これは著作権法で言う二次使用とも考えられますし、当初の契約は終了していると見なされるのが通例です。

 また、今回のケースのように、過去のサウンドロゴを再使用する場合には、作曲者の許可を取り、再契約をするのが業界の慣習になっています。しかし、プロダクションが弱小だったりする場合や、スポンサー企業によってはこの慣習が守られない事も多々あるようです。

 契約書が残っていないのは、CM音楽制作の現場では、契約書を交わさないのが日常だからです。
 最近でこそ、契約書を取り交わすケースが増えてきましたが全てではありません。ましてや1986年の段階では、契約書を交わすという事は私を含め、関係者の誰もが、想像すらしないと言う状況でした。

 さらに今回の提訴には、協議を申し入れた直後は「誠意を持って対応する」という姿勢だった住友生命が、ある時期から急に手のひらを返し「使用に何ら問題はない」という態度に変化し、最終的には「著作物ではない」という回答と共に、一方的にその後の交渉を拒否してきた、と言う物があります。
 これを黙認してしまえば、「サウンドロゴ=著作物に非ず」という主張を認めた事になり、私としては提訴以外に方法がなかったというのが実情です。
 提訴を決意するまで一年間、何とか友好的に解決する方法はないかと模索しても叶わなかった結果の行動なのです。

 一部には、金目当ての訴訟ではないかとい声もあるようですが、これは的外れです。仮に請求額が満額認められ、支払われた所で、裁判にかかる費用と時間を考えれば、殆ど金銭的メリットはありませんし、万が一最高裁まで行くような事があれば、完全に赤字になります。
 
 売名行為という指摘もありますね。これは新聞記事になる事が確定した時点で予想していました。しかし売名が目的ならば、裁判を起こす前にマスコミを利用してアピールします。また、今な事で名前が売れたとしても、仕事的にはメリットありません。むしろマイナスです。
 それでもあえて記事にして貰ったのは、一個人が財閥系大企業を相手に裁判をする事から来る孤独感と恐怖感を、多くの人にこの事実を知って貰う事で、やわらげたかったからです。
 同じ立場を共有するまで解って貰いにくいとは思いますが、人知れずひっそりと闘うというのは、かなりの恐怖感を感じるものです。

【今日の朝日新聞夕刊に】

作成日付 2006/1/4(水) 午後 0:33

 今日の朝日新聞夕刊に、住友生命提訴に関する記事が掲載されます。
 かなり大きな扱いなので目立つでしょう。

 マスコミを利用するのは本意ではないのですが、ある程度一般的に認知して貰った方が、安心感が得られます。

 訴状はまだ被告に届いていないようですが、数日の内には何か進展があるでしょう。

【住生問題】訴状が受理されました


作成日付 2005/12/19(月) 午後 6:28

 先週末、弁護士を通じて東京地裁に、住友生命相互会社を相手取った訴状を提出し、受理されました。ただし、本社が大阪にある会社なので、東京地裁から被告へ訴状を送達し、被告が大阪地裁への移送を求めるかどうかの、確認作業から始まります。
 被告が位相を求めれば、大阪地裁若しくは京都地裁での裁判となりますが、当該部署は東京になるので、恐らく東京での裁判になると思います。

 いよいよ始まります。訴状の要約など、詳細は後日。

【不正を看過して利益を追求すれば・・・】

作成日付 2005/12/19(月) 午前 11:10

「住友生命」C.I.ロゴの不正使用問題で、行動を起こしてから今日まで、時折「将来の仕事を考えれば、ここは大人になった方がよい、あるいは大人になるべきだ(=泣き寝入りした方がよい、あるいは泣き寝入りすべきだ)」「我慢した方が方が仕事にはプラスになるはず」と言う声が時々耳に入ってきます。いかにも日本的な意見だと思いますが、これ、一見もっともなようですが、とんでもない間違いであります。

 まず、ここで泣き寝入りした所で、注文の激減という事態は避けられたかも知れませんが、プラスになんかなりはしません。私が自分で「私は自分の曲を無断再使用されても、文句も言わず我慢しました大人でしょ偉いでしょ。だから仕事沢山下さいね」と宣伝して回らない限り、だれもこの問題の存在を知る事はないし、万が一そんな事しよう物なら、ただ呆れられるか、正気を疑われるだけでしょう。仮に何らかの理由でその事が世間の知る事になったとしても、
「生方という作曲家は、曲を無断再使用されても、文句言わずに大人の対応をした、実に見上げた人物である。だから彼に仕事をドンドン注文しよう」などと言う広告代理店や音楽プロダクションは、300%あり得ないのです。

 次に、これが最も重要なのですが、「将来を考えて云々」というのは言い換えれば「利益」であり、その為に泣き寝入りをすると言う事は「利益を優先して不正を看過する」と言う事ではありませんか。これだけ書けば充分ですね。

 以前よりあちこちで「損得勘定でやるならば提訴なんかしない」と書いたり言ったりしてますが、これは名誉と誇りの問題であります。自分の作品を「著作物に非ず」と言われても、損得勘定優先して泣き寝入りするようなら、作曲なんかやめて、商売人になった方がなんぼかましなのであります。

【住友生命問題】陳述書を書いています。

作成日付 2005/11/10(木) 午後 7:00

 今、提訴に向けて陳述書を書いていますが、法律の世界の論理と、一般的な論理に乖離があるので、時々妙な気分になります。

 民事訴訟なので勿論損害賠償金請求をする訳ですが、日本の裁判では、個人対企業という圧倒的にパワーに差がある場合、なんとパワーのある側をない側のレベルまで落としてイーブンにすると言う傾向があるので、勝訴したところで、金銭的には、あまりというか、殆どメリットはありません。提訴後すぐ和解が成立すれば別ですが、裁判となって長引いた場合、「骨折り損のくたびれ儲け」になることは必至でしょう。
 それでもやらなければならないのだから、後は精神力ですね。

 今回は大勢の方々から、様々な形で支援して頂いているので、それが大きな支えになっています。
 支援者の皆様、本当にありがとう御座います。

【ロゴ問題】投稿を頂きました。


作成日付 2005/10/20(木) 午前 10:13

 文字数制限で、書き込めない、と言う事でメールを頂きました。
 転載許可頂いたので、掲載します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
サウンドロゴに著作権がない、との司法判断が出るとすれば、その仕事に
携わるひとのこれまでが否定されるわけで、あってはならないはず。生方
さんはそれについて闘おうとしているのだ、と私は感じておりますが。た
またま前例のない訴訟を生方さんがすることになっただけのこと。今後い
きなりサウンドロゴに著作権はありませんよ、と誰かが言い出さないとも
限らないわけで、生方さんのせいでサウンドロゴに著作権を認められなく
なってしまったらどうしてくれる、と非難するのはまったくのお門違いの
ような気が私はします。それではまるで、「私は著作権がないかもしれな
いような曲を作る仕事を生業にしているんですよ」と述べているようであ
まり体裁のよい話とは思えません。CMサウンド作りに誇りを持っている
のであれば、また、今後の自分の仕事を守ってゆくのであれば、協力する
かしないかはともかく、足をひっぱるようなことをするのはどうなのでし
ょうか、と、
http://www69.tcup.com/6923/bearpoppo.html
ここでのやりとりを読んで思いました。この訴訟によってサウンドロゴの
作曲がいかに創造的な仕事であるかを証明され、CM音楽を作るひとの地
位が高まると良いな、と私は全然この業界と無関係なのですが、そんなこ
とを考えるのでした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
愛知県在住の戸田豊志さんからのご意見でした。

そうなんですよ。CM(だけじゃないけど)に関わるクリエータの中で、音
楽家って地位が低すぎると思うのです。

【何か雲行きが】

作成日付 2005/10/15(土) 午後 1:36
今まで、住生問題について、私への批判的意見が少ないと思っていたら、だんだん出てきました。
批判的な意見が出るのは当然と思っていますが、こちらが最初から本名晒しているのに、匿名というのが腹立たしい。
http://www69.tcup.com/6923/bearpoppo.html

世の中が2ちゃんねる化しているんだろうか。

【住友生命を提訴します】

傑作 傑作(0)

作成日付 2005/8/2(火) 午前 11:19 | 書庫 住生問題 | カテゴリ 事件

 昨日弁護士と面談して、今はまだ何時やるか、時期の公表出来ませんが、あるタイミングで住友生命を提訴する事にしました。民事です。

 著作財産権並びに著作者人格権の確認と、その侵害に対する損害賠償請求が争点です。

 住生との問題について、詳しくは以下をお読み下さい。
http://blogs.yahoo.co.jp/ubie55/5977191.html#6121284

 弁護士によれば、著作権の歴史に置いて、きわめて重要な意味を持つ裁判になるだろうとの事です。

 そこで、もし同業者の方がこのブログを読まれていたらお願いがあります。

 ご自身が、サウンドロゴを作曲された時の制作上の苦労話を聞かせて頂きたいのです。作曲家なら、15秒30秒60秒のCM本編BGMより時間が極端に短く、制約も多いサウンドロゴの作曲の方が、ずっと難しい作業である事は半ば常識だと思いますが、それを裁判官に納得して貰うため、多くの実例を挙げなければなりません。
 勿論これは証拠として提出するわけですが、内容や実名が外に漏れる心配はありません。

 もしサウンドロゴ作曲に関する体験談をお持ちだ、という方がいらっしゃいましたら、

 sumiseimondai@ybb.ne.jp

 まで、メールでお知らせ願えませんでしょうか。

 作曲作業に関する事のみならず、再使用、継続使用に関して、クライアントと、再契約をしたり更新料を支払ってらったと言う事があるという方も、そのいきさつを、是非お教え下さい。金銭のやり取りはないけれど、昔の作品の再使用について、クライアントや代理店から、使用許諾を求められ、それに応じたという経験をお持ちの方も、是非是非、お願い致します。

 この裁判の結果如何で、今後サウンドロゴに関する著作権適用上の扱いが、大きく左右される、つまり今後CM音楽に拘わる作曲家全員に莫大な影響を及ぼすことになりますので、作曲家の皆様には、ご協力を願いする次第です。私が負ければ、サウンドロゴ=著作物に非ずという判例が、成立してしまうかも知れないのです。

 どうぞご協力よろしく追い願い致します。

【住友生命はCIサウンドロゴを著作物と考えていない。】

作成日付 2005/7/2(土) 午前 10:25

 現在オンエアされている、「住友生命」のCI(コーポレーション・アイデンティティ)サウンドロゴ、ドドドドソ・ミというメロディの歌に女性のナレーションで「スミトモセイメイ」がオーバーラップするやつ、1986年に、私が作ったものなのだが(ナレーションをオーバーラップさせるのも私の発案)、作ってから8年間ほどオンエアされ、その後10年近いブランクを経、去年再録音されて復活した。
 
 しかし、このサウンドロゴ再使用に関して、作曲者の私には何の断りも無かった。つまり、無断再使用だ。当然のことながら、行政書士を通じ、この無断使用について、住友生命に対し、遺憾の意を表明した。

 通常、大昔のサウンドロゴを引っ張り出して再使用する場合、作曲者に連絡を取り、許可を得るのが慣わしで(著作権法上も、そうすべき)、その際金銭のやり取りが発生する場合もある。

 私、同時期に「三井のリハウス」のサウンドロゴも作っており、こちらは、当時の音楽プロダクションの勘違いなどもあり、ちょっとバタついたものの、私と企業との間に和解が成立し、無事、再契約を結んで決着した。

 だが、住友生命は交渉開始当初こそ紳士的な対応だったが、ある日突然態度を変え、再録音、再オンエアは法的に何ら問題はない、と言い出したのだ。行政書士を通じて内容証明郵便で不法使用を指摘し、再契約を求める(この段階で金銭は要求していない)通告書を送付したが先方の態度は変わらず、三井不動産とはかくかくしかじかで再契約に至ったがと伝えても、やはり効果はなく、今度は弁護士に依頼して、問題をさらに具体的に指摘する通告書を内容証明郵便で送付した。

 これに対する住友生命の回答は驚くべきもので、なななななんと。あのサウンドロゴは、著作物とは考えていないので、使用に関して何ら問題はない、と言うのだ。

 サウンドロゴが著作物に当たるかどうかは、文化庁によれば「著作物に該当する」そうで、これは勿論当然なのだが、我々作曲家は全て、サウンドロゴは「曲」だと思って創っているし、実際その製作行程は普通の作曲と何ら変わらず、時間が極めて短い分CM楽曲の中では、良いサウンドロゴを作曲することは、実はもっとも困難な作業なのだ。

 それを著作物ではない、と言われてしまってはたまったものではない。断じて認める訳にはいかず、これはもう、裁判で争うしかないと思うのだが、相手は大企業、こちらはしがない一作曲家、勝って大損、負ければ破滅は目に見えている。それでもこれは絶対に引き下がることは出来ない訳で、闘志はメラメラと燃えながらも、大きな不安を禁じ得ない今日この頃。

 しかし住友生命に訊きたいのだが、サウンドロゴが著作物で無いというなら、ではいったい何だと考えているのか説明してくれませんか?

 もし2.5秒から3秒と短いゆえに曲とは言えず、だから著作物でないと言うのなら、短歌は著作物だけれど俳句は短すぎるから違う、というのと同じようなものでこんな乱暴な話はない。サウンドロゴが著作物でないのなら、ロゴイメージのデザインだって違うことになる。

 著作物でないと考えているなら作曲家に依頼するのは筋違いだし、初めからそう扱われると判っていたら、その依頼を引き受ける作曲家はまずいないだろう。

 まったく、とんでもない話である。