2006年12月30日

朝日新聞で不採用になった原稿。

 住友生命保険相互会社との和解を受けて、朝日新聞の「私の視点」に原稿を送ったのですが「テーマが個別具体的過ぎて普遍性がない」との理由で不採用になってしまいました。音楽やそれに関するものを特別視するこの国の社会の傾向が顕れていると思います。
 編集者の許可を貰いましたので、ここにその没原稿を全文掲載致します。

■守られるべき著作権とは

 以前テレビCMで流れていた、「すみともせいめい」のメロディーを覚えておいでだろうか。この音楽の権利の所在などを巡って作者である私は住友生命保険と交渉を続けてきたが、このほど東京地裁で和解が成立した。
 短く親しみやすい旋律で企業や商品名などを宣伝する音楽を「サウンドロゴ」という。「住友生命」のサウンドロゴは2秒半と短いが、記憶に残っておられる方も多いと思う。私は同社がCMで長年使ってきたことなどに対する正当な対価を求めていたが、今回同社が作者の立場に敬意を払って円満解決に同意してくれたことには心から感謝したい。というのは、これまで広告業界では音楽家の存在が、あまりにもないがしろにされ続けてきたからだ。
 サウンドロゴの制作が容易ではないこと、短い中にどれだけの創意工夫がこめられているかを裁判官に理解してもらうために「住友生命」の社名を、自作である「三井のリハウス」のメロディーで歌って、短い旋律がどれだけ重要かを訴えたり、音符一つ変えて歌って、どれだけ印象が変わるかを実感して貰うなど、色々と作戦を考えねばならなかった。
 一般社会でも、サウンドロゴが音楽作品である、との理解が行き届いているとは残念ながら言い難い。世の中には同じような問題で泣き寝入りせざるを得ない、またはそれを強いられているクリエーター(特に若い人)が、山のように存在している。中小のCM音楽制作会社などで、きちんと契約を交わさないまま作品を作らせては、期限も定めずに使い続けている例は枚挙に暇がない。最近話をした沖縄の制作会社の関係者は「無法地帯」という言葉さえ使っていた。
 相対的に立場の弱いクリエーターが「干されるリスク」を恐れて泣き寝入りをするのは、何も音楽業界に限った話ではない。これは日本の社会構造に強く根ざしているものだと思う。権利を侵害されるのは常に個人や小さな会社だが、大手企業は自分たちの権利を守ることには実に熱心だ。その最たるものの一つが、昨今話題の著作権保護期間の延長問題である。
 日本文芸家協会などの著作権管理団体は、保護期間を現行の著作者の死後50年から70年に延長することを主張する。だが、この法案によって守られるのは誰の権利だろうか。たとえば出版物の場合、著作権料の大部分はその出版元へ行くのだ。音楽や映画などにしても、より多くの金が落ちるのは流通・配給などの段階で、作者へのわずかな還元は後回しにされる。
 私はもとから国に頼って音楽を作ろうなどとは考えていない。個人的には、死んだ後には自作を誰でも演奏できるようパブリックドメイン(社会の共有財産)にしてほしいと思う。だがこの国が今後知財立国を目指し、国民の中から優秀なクリエーターが輩出することに期待するのであれば、何より先に保護されるべきは、既に評価の定まった一部の作品でなく、今まさに新たな創作に挑んでいる若い才能であろう。そして若い世代が先行する作品から存分に学んで応用できるよう、創作への柔軟な利用を認める知財政策を取ってほしいと願ってやまない。

生方則孝:作曲家、シンセサイザー&テルミン奏者。
blog URL:http://ubulog.sblo.jp/
この記事へのコメント
生方様
福冨と申します。和解をお喜び申し上げます。

ところで、著作権保護期間の延長に関して、上記原稿には、誤解と思われる箇所がありますので、指摘させてください。

文芸家協会ほかが延長を求めているのは、(個人の)著作者の保護期間の延長です。上記には「出版物の場合、著作権料の大部分はその出版元へ行くのだ」とありますが、出版社が自ら執筆しているのでなければ、著作権料を出版社が受け取ることはできません。

音楽の場合は、作詞と作曲家の権利が著作権です。演奏家(実演家)、原盤権・音楽出版権などは著作隣接権として、この問題とは別になります(出版物の場合、隣接権はありません)。

また、映画の場合は、映画製作会社に著作権が発生しますが、こちらは発表後50年で著作権が消滅します。こちらについては現在延長は求められていません(ただしヨーロッパなどでは、映画の著作権を製作会社ではなく監督や脚本家に帰属させており、日本でも同じ権利を求める監督らの動きもあります)。

自分の作品をパブリックドメインにすることは、現状でも権利を譲渡ないし放棄することを言明すればできると思います。ですので死後についても遺言などの形で残せば可能だと思います。


Posted by 福冨忠和 at 2007年01月16日 02:24
福冨様。

ご指摘ありがとう御座います。音楽の場合、原盤権料が売り上げの大半を占めるので、それと混同してしまったかも知れません。出版物に関しては、情報提供者に確認して、後ほど訂正などの処置を執らせて頂きます。
Posted by 生方則孝 at 2007年01月16日 12:03
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